犬と猫のドライアイ
犬と猫のドライアイは人よりも症状が進んだ状態になっていることが多く、目が赤い、ベトベトの目ヤニが多い、痛いという症状がでています。
人のドライアイが初期の段階である眼の不快感の時点で治療が開始されるのと比較すると、犬と猫のドライアイはt初診時にはすでに眼にダメージが出ているという点が大きな違いでしょう。
ドライアイは乾性角結膜炎(かんせいかくけつまくえん)という名前が正式名であり、眼を守るための涙の成分が減って、眼の表面が乾燥することによって眼にダメージが出る状態です。
基本的に犬や猫のドライアイは病気や手術、ケガなどによって引き起こされているので、人のドライアイとは違う部分が多くあります。
この記事では、犬と猫のドライアイについて、症状、原因、治療について解説していきます。
犬と猫のドライアイとは
犬と猫のドライアイは人のようにスマホの見すぎや集中しすぎて瞬きが減って起きるようなものではなく、長い間の瞼(まぶた)の炎症や、眼のケガ、瞬膜(しゅんまく)の切除、ウイルス感染、そして免疫異常が原因です。
それらの原因によって眼を守るための涙の分泌が不十分になり、眼の表面が乾燥して無防備になるため、細胞がはがれてしまったり、細菌が感染しやすくなってしまいます。
人のように眼の不快感のような初期の状態ではなく、犬と猫のドライアイでは角膜や結膜にしっかりとした炎症が起きてしまっています。
ドライアイの症状は白目が赤くなる、眼が痛そう、眼が開きづらそう、目ヤニが増えるなどが多いです。
また、涙の分泌が少ない原因を取り除くことが難しいので、基本的には長く治療と管理を続ける必要があります。
猫にはドライアイの症状が出ることは少なく、犬での発症が主です。
ただ、高齢の猫では眼の乾燥しやすさというのは時々発生しますので、都度に治療してもらえると良いでしょう。
<犬と猫のドライアイ>
・人のような生活習慣が原因ではない
・眼の表面の細胞が傷ついていることが多い
・眼に細菌感染がおきていることが多い
・痛みが出ていることも多い
・すぐに治るようなものではない
・猫には少ない
エキゾチック・ショートヘア
現在、松波動物病院メディカルセンターにてドライアイの治療中です。
エキゾチック・ショートヘアやペルシャなどの短頭種は「涙やけ」・「ドライアイ」になりやすいため、品種によっても必要なケアがあります。
犬のドライアイの原因
では犬に多いドライアイの原因とはどんなものがあるのでしょうか?
原因不明のものも多いのですが、専門的に分類すると以下のようなものが挙げられます。
<犬のドライアイの原因>
・先天性乾性角結膜炎
・薬による乾性角結膜炎
・神経原性乾性角結膜炎
・チェリーアイの手術による乾性結膜炎
・免疫介在性乾性角結膜炎
・感染による乾性角結膜炎
ではそれぞれに説明していきます。
先天性のドライアイ
生まれつきに涙を分泌する腺が無い、あるいは十分な機能が無いことが原因でおこるドライアイが先天性のドライアイで、普通は片目だけ発症します。
小型犬種でみられることが多く、チワワやヨークシャーテリアなどで報告が多いです。
巻き毛のキャバリアキングチャールズスパニエルでは、生後10日で、両目で発生するものも報告があり、角膜潰瘍(眼の表面が傷ついている)が子犬の時からみられます。
薬の投与によるドライアイ
涙の分泌量を低下させる副作用をもつお薬は多くあります。
涙は自律神経によって調節されているため、それらに作用するお薬では涙の量に変化が出ます。
<涙の量を減らすお薬>
・多くの麻酔薬
・アトロピン
・ブトルファノール
・フェナゾピリジン
外科手術では麻酔薬とアトロピンも投与されることが多いので、術後は眼が乾きやすい状態と言えます。
手術後に愛犬や愛猫の眼に変化があった場合には、すぐに受診するようにしましょう。
神経に問題があるドライアイ
顔面神経麻痺(がんめんしんけいまひ)の症状の一つにドライアイがあります。
涙を出す神経に問題が出ることで、涙の分泌量が減ってしまうためです。
通常は麻痺している側の眼だけでドライアイの症状が出ます。
チェリーアイの手術によるドライアイ
第三眼瞼腺脱出(いわゆるチェリーアイ)の治療として、飛び出た部分を切り取る手術を行うことがありますが、それによってドライアイになることがあります。
第三眼瞼腺(だいさんがんけんせん)を切り取る手術では47%にドライアイが発生し、切り取らずに埋め込む手術では17%でドライアイが発生するという報告があります。
そのため、症例にもよりますが、なるべく切り取らずに埋め込む手術がお勧めされることが多いです。
もともとドライアイの素因があり、それが悪化してしまうと考えられています。
免疫によるドライアイ
自分の免疫細胞が、涙の分泌腺に集まって炎症が起きるため涙が減ってしまうことがあります。
慢性的な炎症がもとであったり、体質によるものと考えられます。
免疫を調節する目薬を投与することで良化します。
感染によるドライアイ
犬ではジステンパーウイルスによるドライアイが有名です。
ワクチン接種が進んでいるため、ジステンパーウイルス感染をみることは少なくなりましたが、ごく稀に発することがあります。
ジステンパーウイルスは涙腺に炎症を起こし、ドライアイを発症させ、眼の表面に穴があくこともありますので、強い痛みが出ています。
眼を保護する点眼剤を使用して、全身状態が良好になれば6-8週で自然に治ります。
原因は不明のドライアイ
実際には原因が確定されることは少なく、原因不明のドライアイもとても多いです。
犬と猫のドライアイの治療
ドライアイは涙の量が足りないことでおきるので、基本的には涙成分を目薬で入れてあげることが大切です。
また、目の表面(角膜)がすでにえぐれてしまっていることも多く、この状態を角膜潰瘍と言います。さらに悪化するとデスメ膜瘤(ですめまくりゅう)という深い傷ができます。
その場合には角膜保護成分の入った目薬も必要です。
さらに、涙が少ないために眼の防御が低下して細菌感染が起きていることが多いため、治療の初期には特に抗菌薬の目薬も使用されることが多いです。
免疫介在疾患のドライアイ、あるいは原因不明のドライアイでは、免疫を調節するシクロスポリン点眼という目薬がよく使用されます。
ただしシクロスポリン点眼は感染性や先天性のドライアイには効果がありませんので、試験的に使用しても効果がない場合もあります。
目薬をさす回数は1日に1回から5回など幅広く、眼が痛い状態では動物も目薬を嫌がるので治療はとても大変です。
どうしても目薬が難しい場合には、飲み薬に変更できるものは変更しますが、人工涙液や角膜保護の目薬は飲み薬にはできないので、頑張ってもらう必要があります。
目薬の入れ方にはコツがありますので、動物看護師さんや獣医師にやり方を教えてもらいましょう。
<犬と猫のドライアイの治療>
・涙成分の目薬をさす
・角膜保護成分の目薬をさす
・細菌感染があるときは抗菌薬の使用する
・免疫調節剤の目薬をさす
・目薬は1日に多ければ5回ということもある
・痛みがあると動物は目薬を嫌がる
・目薬をいれるコツを教えてもらう
まとめ
犬と猫のドライアイは人のドライアイと違って、角膜や結膜に問題が出る段階まで進んでしまっています。
また、原因は生活習慣などではなく、生まれつきの特徴であったり、細菌やウイルスの感染、神経の麻痺、さらにチェリーアイの手術などが上げられますが、多くは原因不明です。
ドライアイの治療には基本的には目薬が使用されます。
足りない分の涙を眼に追加してあげるため、人工涙液や角膜保護の目薬が使用されることがほとんどです。
免疫が関連している場合にはシクロスポリン点眼液のような免疫を調節する目薬も使用されます。
原因にもよりますが、多くは治療は長期になるか、あるいは生涯にわたって必要になることが多いです。
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