トイプードルに多い?子犬の剝離骨折(はくりこっせつ)について
子犬がキャンキャンキャン!!と痛そうに鳴いて、その後から片方の後ろ足をまったく地面につかなくなってしまった場合には、骨折の可能性があります。
子犬の時期に特有なのが剥離骨折(はくりこっせつ)です。
剥離骨折は骨折と名前が付いているものの、太い骨がボキっと折れてしまうわけではなく、子犬の時のまだ柔らかい成長板といわれる軟骨が剝がれてしまった状態です。
成長板がしっかりと固くなる生後1歳ほどには、ほとんどの犬で剝離骨折はおきません。
逆に、生後4-6か月で、活発に動く時期にもかかわらずまだ骨が固く固定されていない時期は注意が必要です。
トイプードルやチワワなどの小型犬に多いと言われていますが、活動性の高いフレンチブルドッグや柴犬などの中型犬の子犬でも見られます。
この記事では子犬に特有の剝離骨折について解説します。
子犬の剝離骨折(はくりこっせつ)とは
剝離骨折はあまり多くない骨折ですが、子犬の足の成長に関わる部分の骨折なので、見逃してはいけないとても重要な骨折です。
子犬の骨には、成長板(せいちょうばん)と言って、骨が伸びていくために必要な柔らかい軟骨のような伸びしろが存在します。
この部分は骨の成長にとても重要で、この部分を巻き込んで骨折すると大学病院などの大きな病院で手術しなければならないこともあるためです。
剝離骨折は、脛骨(けいこつ)という膝から下の骨についている、脛骨粗面(けいこつそめん)という部分が、成長板の所でめりっと剥がれてしまっている状態です。
簡単に言うと、膝の関節の大切な一部が千切れて剥がれている状態です。
一般的な子犬の骨折では、月齢や骨折部位によっては外科手術にならずに外固定(いわゆるギプス固定のような)で問題なく治ることが多いのですが、剝離骨折は最終的に外科手術になってしまうことが多いです。
なぜなら子犬に安静指示や固定(いわゆるギプス)をすることもむずかしく、しかも剝離骨折は成長に重要な場所が剥がれてしまっているためです。
外科手術でしっかりと直さずに、悪化させたままにしておくと骨の成長に影響が出て、その後の歩き方が不自然になってしまうこともあります。
好発犬種というものは無いようですが、どちらかと言えば小型犬種であるトイプードルやチワワなどに多いですが、他の犬種の子犬の時期(1歳以下)にも発生します。
<子犬の剥離骨折>
・多くはない骨折の1つ
・脛骨粗面が剥がれている状態
・放置すると成長に悪い
・外科手術になることも多い
・子犬の成長期に多い(1歳以下)
・小型犬種に多いと言われている
・中型犬種の子犬にもみられる
子犬の剥離骨折の症状
ソファから落ちたり、抱っこから降ろしたり、あるいは見ていない時に、急に子犬がキャンキャンキャン!!ととても痛そうに鳴いて、その後には、片方の後ろ足に力を入れて立てないという症状が最初に見られます。
ただ、剥がれ方が軽度であればあまり痛みで鳴かないこともあるようです。
その後には、その足を触るとまたキャン!と鳴いたり、あるいは曲げると痛がるということが多いです。
翌日から数日後には、膝に内出血(青あざ)が出てきて、膝の周囲が腫れていることが多いです。
軽症であった場合には、鎮痛剤(痛み止め)などで歩けるようになりますが、しっかりと脛骨粗面が脛骨から剥がれてしまっている場合には、数日で良化することはなく、ずっと足を挙げたままになってしまっています。
<子犬の剝離骨折の症状>
・突然キャンキャンキャン!と痛そうに鳴く
・膝を触ると嫌がる、痛がる
・痛い足に体重を乗せられない
・膝を曲げると痛みが出る
・時間がたってから内出血が出る
・膝の腫れが出てくることが多い
子犬の剝離骨折の検査
まずは問診で、どのような状態で痛みが出たのかを確認します。
その痛みはだんだんと悪化しているのか、時間がたっても変化がないのか、あるいは軽減しているのかも重要です。
また、活発な性格の子犬さんに多いので、活動性も確認します。
次に触診です。
触って腫れや熱感が無いか、どこが痛いのか、触っただけで痛いのかを確認します。
さらに、どの動作で痛みがでるのか、後ろ足の曲げ伸ばしをしてみます。
痛い足には体重をまったくかけられないのか、体重をかけると痛みが出るのかも確認し、あまりに痛みが酷い場合には痛そうな触診は後回しになることもあります。
ここまでで、膝が痛そうだ、あるいはどこが痛いのかわからないが後ろ足がとにかく痛いということであれば、骨と関節に異常がないのかをレントゲン検査で確認します。
レントゲン検査では、骨にヒビや折れているところが無いか確認し、関節がずれていないかを見ることができます。
しかし剝離骨折は、レントゲン検査でもあからさまに「ここが折れている!」というようには見えません。
骨折部が、もともとレントゲン検査で離れて見える場所なのです。
子犬の関節部は、まだまだしっかりと固まっておらずに、骨がバラバラになってレントゲン検査にうつるのが正常です。
そのバラバラの加減が、異常に離れてバラバラになっていないか、あるいは、じん帯に引っ張られて、はがされた骨の破片が写っていないかを見つけます。
一回のレントゲン検査では判断できないことも多く、1週間目、2週間目と時間をおってレントゲン撮影をすることで、「どんどん剥がれている!」となれば剥離骨折であろうと診断できます。
大きい病院であればCT検査も可能ですが、全身麻酔が必要となることが多いので、実施するかどうかは担当獣医師の判断となります。
<子犬の剝離骨折の検査>
・問診(お話をきく)
・触診(触って調べる)
・レントゲン検査
・CT検査(※全身麻酔が必要)
子犬の剝離骨折の治療
骨折で大切なことは、だいたいの場合で安静と外固定(ギプスのような固定)です。
しかし子犬の剝離骨折では、その安静がとても難しいことが多いです。
まず剝離骨折をする子犬は活発であることが多いため、その性格の子犬に安静にしろと言っても無理しかありません。
また、子犬はそこまで筋肉量があるわけでもないので、何重にもぐるぐる巻きにされた綿や接着包帯、固い副子(いわゆる添え木の役割)の重みを他の3本の足で支えきれないことも多く、うまく立てません。
それでも動こうとするので、外固定がずれてしまったり、おしっこがついて汚れやすくなります。
安静も外固定も難しく、最終的には外科手術で剥がれてしまった部分にピンやワイヤーを入れるケースが多いです。
こんなに小さいのに手術なんて、と思われる飼い主さんも多いのですが、手術をしなければその足の筋肉はどんどん細くなって、いつも庇って歩くようになってしまうかもしれません。
手術自体は難しいものではないのですが、症例数が多くはないので、手術に慣れた先生、大学病院、二次診療施設へ紹介されることが多いです。
<子犬の剝離骨折の治療>
・安静と外固定
・外科手術
・痛みの程度により鎮痛剤
子犬の剝離骨折で大切なこと
まず、子犬がキャンキャンキャンキャン!と悲鳴をあげるので、パニックになってしまう飼い主さまが多いです。
気持ちはよく理解できるのですが、落ち着いて、深呼吸をして、動物病院に連絡をして診察が可能か確認しましょう。
子犬の時期の骨折を防ぐためには、滑らない床材やソファに上がらせないなどの対策をとりましょう。
まとめ
1歳未満でおきる子犬の剝離骨折は、小型犬種に多いと言われていますが、中型犬種の子犬にも発生します。
膝の関節の一部が千切れて剥がれてしまっている状態で、その足に体重をかけられず、曲げると痛みが強くなることが多いです。
レントゲン検査でもはっきりと剥がれていることが断定できず、時間をおいてから再度撮影して診断がつくことがあります。
安静とギプスのような外固定が必要ですが、子犬時代にはそれが無理であることが多いために、外科手術が必要になることもあります。
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