たくさん吐いて元気もない!異物の誤食の怖さを解説
散歩中に小石を食べちゃった、髪をしばるシュシュを飲んじゃった、買い物袋から玉ねぎを盗み食いしていた、トウモロコシを芯ごと食べた、おしりから糸が出ているわ、など日々の診察では異物の誤食というケースを多くみます。
異物の誤食が怖いのは、それが消化されないもので消化管に詰まってしまって腸が壊死してしまうような命に関わる状態になるところです。
また、玉ねぎやチョコレート、ブドウなど、犬猫にとっての中毒物質を食べてしまったときにも命に関わります。
希に異物や中毒物質ではなく、ペット用のオヤツが消化菅に詰まってしまうこともあるので、吐き気が強いのであれば注意が必要です。
この記事では愛犬や愛猫が誤食の可能性がある時に動物病院へ行く目安や、その時の検査、対処について解説します。
異物の誤食とは
異物というのは、食べてはいけないもの、食べ物ではないものをさします。
つまり、消化できないものや、犬や猫にとって毒物となるもののことです。
誤食してしまった!とよく聞くものを以下に挙げます。
・石
・靴下
・ジョイントマット
・おもちゃ
・髪用のゴム
・歯磨きグッズ
・トウモロコシの芯
・玉ねぎ入りの食品
・ぶどう
・人用の薬
小さくても危険なのは人用のお薬です。
人の体重に合わせて作られているため、犬や猫が飲んでしまうとだいたいはオーバードーズ(多すぎる量)になるので、お薬の種類によっては中毒で痙攣(けいれん)や昏睡(こんすい)、多臓器不全になることもあります。消化できないタイプの異物では、食道や小腸につまってしまうことが問題になります。
逆を言えば、消化できないものでも消化管に詰まったりしなければ、問題なく便から出てくることも多くあります。
犬と猫の毒物の誤食
人には問題がなくても、犬や猫にとっては毒物になるという食品があります。
最近はよく知られるようになってきたぶどうもその一つです。
犬はぶどうを食べると急性腎不全になることがあるので、食べさせてはいけません。
そのほかにも、キシリトールは犬猫の血糖値を下げて低血糖発作を起こすので危険です。
人には大丈夫でも、犬猫には危険な食品を以下に挙げます。
・ぶどう
・キシリトール
・アボカド
・ネギ類
・チョコレート類
・カフェイン類
買い物してきて床においてあった玉ねぎを生のまま丸ごと食べてしまったチワワもいました。
その後に玉ねぎ中毒となり重度の貧血で命にかかわる状態にまでなりました。
こんなものは食べないだろう、と油断せずに中毒物質となる食品を管理しましょう。
人用のお薬による中毒
人用の解熱鎮痛剤は、犬猫にとって中毒を起こしやすいお薬です。
頭が痛い時、熱が高い時などに解熱鎮痛剤を飲むことが多いので、常備薬として置いてあることが一般的です。
アセトアミノフェンという解熱鎮痛剤は人用として多く流通していますが、猫にとっては猛毒です。
猫がアセトアミノフェンを誤食してしまうと、少量でも重篤な症状を出すことがありますから、間違って床に落としてそのままにする、などは絶対にしないようにしましょう。
その他にも高齢のご家族がいて、血圧を下げるお薬を飲んでいたり、抗がん剤を服用していて、それを間違ってペットが飲んでしまうということもありました。
抗がん剤は種類によっては細胞を壊す力が強いので、犬や猫の肝臓や腎臓へのダメージが致死的になることがあります。
人用の薬の管理は徹底しなくてはいけません。
飲み薬ではなくても、湿布薬を飲んでしまって、胃潰瘍になった犬もいました。
湿布薬には、抗炎症剤が入っていて、それが胃粘膜の分泌を抑えてしまい、胃粘膜が胃酸でただれてしまったということです。
<誤食されると怖い人用の薬>
・解熱鎮痛剤(イブ、カロナール、ロキソニンなど)
・血圧を下げる薬
・睡眠薬
・湿布薬(バンテリンなど鎮痛成分入り)
・抗うつ薬
・血栓予防薬
・抗がん剤
・ほぼすべての人用の薬
消化管に詰まる誤食
中毒は起こらないけれど、消化管につまってしまう誤食のパターンも、犬と猫には辛い状況になります。
どこに詰まるのかによって、その症状も変わります。
しかし食べ物であっても詰まることがあることも知っておきましょう。
<消化管につまりやすいもの>
・固すぎるオヤツ
・桃の種
・トウモロコシの芯
・固い野菜
・ジョイントマット
・髪に使用するシュシュ
・ペット用のおもちゃ
大型犬では胃内に3カ月前になくなったテニスボールがあったり、誤食したと申告のあったオモチャ以外のオモチャも複数個出てくることもあります。
オヤツで売られているものであっても、固すぎたり、消化しにくいものであれば、噛まずに飲んだものが食道や小腸に詰まって吐き気が出ることがあります。
動物病院へ行く目安
中毒物質を食べたり飲んでしまったときは、すぐに症状が出ないこともありますが、とにかく早く動物病院へ行くようにしましょう。
消化できないものを食べてしまったときも、吐かせる処置をとるケースもあるので、なるべく早く受診するようにしましょう。
誤食してから数日たってしまって、吐き気が出てきた時、食欲や元気が低下してきた時には受診しなければなりません。
<受診の目安>
・食べたのを目撃したらすぐに
・誤食して数日して吐き気が出たとき
・元気や食欲が低下したとき
誤食時の処置
今まさに、食べてはいけないものを食べてしまった時には、早急に吐かせる処置(催吐処置:さいとしょち)を行うことがあります。
食べて30分以内であればまだ異物が胃内にあることが多いので、吐かせて体外に出すことができるのです。
ただし吐かせることが危険なものもあります。
とがったものや、刺さるものは、吐かせる処置によって食道を傷つけてしまう可能性があるためです。
吐かせることが危険でなければ、獣医師の判断で妥当と判断されると催吐処置(さいとしょち)が実施されます。
<吐かせる処置をする時>
・食べたことが確実
・食べてから時間があまりたっていない
・吐かせても危険ではない物
異物誤食時の検査
目の前で確実に誤食をしたのを見ていたのであれば、検査をせずに処置へ進みますが、食べたかどうかわからない、食べている可能性がある、吐き気が酷いという時には検査で異物が体内にあるのかを探す検査をします。
<誤食時の検査>
・レントゲン検査
・腹部エコー検査
・CT検査
・内視鏡検査
・バリウム造影検査
レントゲン検査は動物に負担も少なく、すぐに結果が出るので一番最初に行われることが多いです。
しかし、レントゲンに写るような金属や固い物でなければ誤食したものがどこにあるのか解りません。
腹部エコー検査も動物に痛みや負担の少ない検査で、誤食したものがどこにあるのかを見つけるのに、とても有効です。
しかし、検査する人の経験値や技術によるところが大きいので、見つけられないこともあります。
大きい病院であればCT検査を実施することもあります。
しかし、麻酔や鎮静が必要なことが多いですし、検査費用は高価になります。
内視鏡を入れて、食道と胃、十二指腸まで異物の確認をすることができます。
全身麻酔は必須になりますが、見つかればそのまま取り出すことも可能です。
しかし、空腸から先の腸であれば内視鏡が届かないので確認することができません。
異物が消化管に詰まっているのかを確認するために、バリウム造影検査を実施することがあります。
もし異物が消化管につまっていれば、バリウムがその場所から先に進まずに、閉塞が解るというものです。
しかし、バリウム造影してしまうとエコー検査やCT検査、内視鏡検査がやりづらくなることもあります。
異物を取り出す
吐かせる処置が妥当でない場合、内視鏡で取り出すか、あるいは試験開腹を行うことが多いです。
内視鏡は全身麻酔は必須であるものの、胃腸を切らずに住むので動物の負担はそこまで大きくありません。
試験開腹は、実際にお腹をあけて、異物がどこにあるのかを人が触って、見て確認し、異物を取り出します。
腸の色や腹腔内の状態も見ることが出来るので確実です。
しかし、お腹を切って開けることになるので、動物にとっては大きな負担であり、費用も数十万円かかることも多いです。
まとめ
異物の誤食は動物の命にかかわる怖い状況です。
中毒物質の誤食は中毒症状によって貧血か急性肝不全、腎不全がおきます。
また、消化管に詰まるような誤食も酷ければ腸を切る手術が必要になるような危険な状態になります。
まずは食べないように人が十分に注意して、食べてしまったときにはすぐに動物病院へ連れて行くようにしましょう。
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