見逃さないで!愛する家族(犬と猫)の健康診断完全ガイド
「うちの子は元気だから大丈夫」
そう思っていても、ペットの体の中では知らず知らずのうちに病気が進行しているかもしれません。
犬や猫は、私たち人間のように「ちょっと調子が悪い」と訴えることができません。
そのため、彼らが健康で長生きするためには、飼い主さんによる定期的な健康チェックと、動物病院での健康診断が不可欠です。
この記事では、犬と猫の健康診断の重要性、特に早期発見が難しい病気について、そして健康診断を通じて愛する家族の命を守る方法を詳しく解説します。
知っていますか?ペットの健康診断の日
まず、飼い主さんに知っておいてほしい大切な日があります。
<毎年10月13日は「ペットの健康診断の日」>
一般社団法人・Team HOPEによって、毎年10月13日は「ペットの健康診断の日」として制定されています。
この記念日は、「じゅういさん(10・1・3)」という語呂合わせに由来しています。この日は、飼い主さんに動物病院で定期的な健康診断を受けることの重要性を再認識してもらい、病気の早期発見・早期治療を通じて、大切なペットの健康寿命を延ばすことを目的としています。
人間が年に一度健康診断を受けるのと同じように、言葉を話せないペットこそ、定期的なチェックが必要なのです。

犬と猫の時間の流れを知る
なぜ、犬と猫の健康診断がそんなに大切なのでしょうか?それは、彼らの時間の流れが私たち人間とは大きく異なるからです。
犬や猫は、種類やサイズにもよりますが、人間の約4倍の速さで年をとります。
例えば、1年間の時間の経過は、私たち人間にとっての4〜5年に相当します。
私たちが年に一度の健康診断で済むのに対し、彼らにとっては毎年の健康診断は人間の4〜5年に一度のチェックと同じくらいの意味を持ちます。
病気はあっという間に進行してしまうため、年に一度、理想は7歳を過ぎたシニア期に入ったら半年に一度の健康診断が推奨されます。
自覚症状がないまま進行する恐ろしい病気
犬や猫のすごいところは、病気や痛みがあってもそれを隠そうとする本能を持っていることです。
これは、野生で暮らしていた頃の名残で、弱みを見せると敵に襲われたり、群れから外されたりするリスクを避けるためです。
そのため、飼い主さんが「あれ?いつもと違う」と気づいた時には、病気がかなり進行しているケースが少なくありません。
特に、症状が出にくいものの、進行すると命に関わる重大な病気を知っておきましょう。
猫:心臓病(特に肥大型心筋症)
猫の心臓病で最も多いのが肥大型心筋症(HCM)です。
これは、心臓の筋肉(心室の壁)が異常に分厚くなり、心臓の部屋が狭くなることで、血液を十分に取り込めなくなる病気です。
症状が出にくい:初期〜中期にかけては、ほとんど症状が出ません。
急変のリスク:進行すると、肺に水が溜まる肺水腫や、心臓内でできた血栓が後ろ足の血管に詰まる 大動脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群に似た状態) を突然引き起こすことがあります。特に血栓は激しい痛みを伴い、緊急治療が必要です。
健康診断での発見:聴診で心雑音が聞こえることもありますが、初期のHCMは聴診でも発見が難しく、 レントゲン、心臓の超音波検査(エコー検査)、血液検査(心筋トロポニン、NT-proBNPなど) といった専門的な検査が早期発見に役立ちます。
犬猫:腎臓病・肝臓病
犬も猫もシニア期に入ると注意が必要なのが、腎臓病と肝臓病です。
特に腎臓は臓器の機能が75%以上失われるまで、目立った症状が出にくい「沈黙の病気」です。
<腎臓病>
腎臓は血液をろ過し、老廃物を尿として排出する重要な臓器です。
症状が出た時:腎臓の機能が低下すると、体内の老廃物が溜まり、多飲多尿(水をたくさん飲み、おしっこがたくさん出る)や食欲不振、嘔吐などの症状が現れますが、これはすでに病気が進行しているサインです。
健康診断での発見:血液検査で「クレアチニン(Cre)」や「尿素窒素(BUN)」といった腎機能を示す数値の上昇、またはより早期の指標であるSDMAの異常を捉えることが、早期治療の鍵になります。
<肝臓病>
肝臓は「化学工場」とも呼ばれ、栄養の代謝、毒素の解毒など数百にも及ぶ重要な役割を担っています。
症状が出た時:肝臓は再生能力が高いため、ダメージを受けても代償して機能し続けます。症状としては黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、嘔吐、腹水などがありますが、これらもかなり進行してから現れることが多いです。
健康診断での発見:血液検査で「ALT(GPT)」「AST(GOT)」といった肝酵素の上昇や、ALPの上昇を捉えることで、まだ症状が出ていない初期段階で病気の兆候を発見できます。
犬猫:甲状腺機能の異常
高齢になると甲状腺というホルモンを出す場所に不具合がでることが多いです。
甲状腺ホルモンは、長生きホルモンや元気ホルモンと言われることがあり、動物の活動性などに影響を与えるホルモンです。
高齢の猫は甲状腺機能亢進症といって、甲状腺ホルモンが出すぎてしまう病気になることが多く、妙に元気で、鳴き声が大きくなる、すごく食べてよく吐く、痩せてくるなどの症状が出ます。
高齢の犬は逆に甲状腺機能低下症といって、甲状腺ホルモンが減ってしまう病気になることが多く、食欲があまりない、活力もない、毛が薄くなってきた、食べないのに太るなどの症状が出ます。
甲状腺機能の検査は、血液検査で甲状腺ホルモンの値を測定するだけで解ります。
ホルモンの値を定期的に検査することで早期発見につながるので、高齢になったら甲状腺ホルモンも追加で測定してもらいましょう。
血液検査・健康診断が命綱である理由
なぜ血液検査を中心とした健康診断が、ペットの命を守る「命綱」となるのでしょうか。
それは、 症状が出る前の「変化」 を客観的な数値で捉えることができるからです。
早期発見・早期治療の絶大なメリット
病気が初期段階で見つかれば、食事療法(療法食)やサプリメント、生活習慣の改善など、体への負担が少ない治療から始めることができます。
進行して手遅れになってしまうと、点滴や入院、外科手術など、ペットの苦痛や治療費の負担が大きい選択肢しか残されないこともあります。
病気の進行を遅らせることができる
特に慢性的な病気(慢性腎臓病など)は、一度発症すると治癒は難しいとされています。しかし、早期に発見し、適切なケアを始めることで、病気の進行を大幅に遅らせることが可能です。
これにより、ペットの生活の質(QOL)を高く保ち、健康寿命を延ばすことができます。
個体ごとの「基準値」を知る
健康診断の数値には一般的な「正常範囲」がありますが、もっと大切なのは 愛猫・愛犬個体にとっての「正常値」 を知ることです。
例えば、ある腎臓の数値が一般的な正常範囲内であっても、過去の検査と比べて徐々に上昇傾向にある場合、「その子にとっての異常」として、獣医師はより早い段階で警戒し、対策を講じることができます。
定期的に検査を受けることで、この「経時的な変化」を把握できるようになります。
特に7歳以上のシニア期に入ったら、血液検査と尿検査は年に1〜2回受けるようにしましょう。
まとめ:予防医療こそが最善の愛情
犬や猫は、私たちが思う以上に病気と戦っています。彼らが言葉を話せないからこそ、飼い主さんが代わって体の声を聞き取ってあげなければなりません。
「ペットの健康診断の日」(10月13日) を一つのきっかけとして、愛する家族の健康を深く考える時間を持ってください。

今日から愛猫・愛犬の体のサインに耳を傾け、年に一度の「家族の健診デー」を設け、末永く幸せな時間を過ごしましょう。


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