2025.06.11健康

犬と猫の熱中症にご注意を

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水を飲む猫

 

地球温暖化の影響により、日本の夏は年々厳しさを増しています。

特に春から初夏にかけて、気温が急に上昇する日が増えており、人間だけでなく、犬や猫といったペットたちにとっても命にかかわるリスクが高まっています。

中でも「熱中症」は、最も注意すべき健康被害の一つです。

 

日々の診察のなかでも、「人が半袖を着たいと思う環境であれば、犬は毛皮を脱げないのでクーラーが必要ですよ。」と伝えるようにしています。

猫は犬よりは暑さに強くクーラーを嫌うのですが、湿度まで上がるようであれば、ドライモードをお勧めすることも多いです。

 

なぜなら犬や猫は人間に比べて体温調節が苦手な動物だからです。

特に夏場や梅雨の時期には、気温や湿度の上昇によって体内の熱がこもりやすくなり、熱中症のリスクが高まります。

そのため、室温と湿度のコントロールは、犬猫の熱中症対策において最も基本かつ重要なポイントです。


この記事では急な暑さがもたらす危険性、室温と湿度の目安、水分補給の重要性と具体的な方法、そして自宅で簡単にできる脱水チェックの方法について詳しく解説します。

急に暑くなる日の危険性

Breed dog - French Bulldog lying on the walkway and stuffed his tongue to breathe. An overheated dog lies on a concrete pavement and puts out his tongue to breathe hard

犬や猫は人間と違い、衣服での体温調節もできず、体温調節の機能に限界があります。

特に犬は体表の大部分に汗腺がなく、呼吸(パンティング)によって体温を下げます。

猫も犬と同様に汗をかく場所は肉球くらいで、体温を下げる機能は高くありません。

そのため、気温が急に上昇した日は、私たちが感じる以上に体温調節が難しくなります。

 

たとえば、5月の中旬まで20℃前後だった気温が、突然30℃近くまで上がるような日には、犬や猫の身体が環境の変化に追いつかず、熱中症を発症するリスクが一気に高まります。

屋内にいるからといって油断はできません。

 

締め切った室内はあっという間に高温になり、通気の悪さや湿度の高さが加わることで、体にこもった熱が放散されにくくなります。

 

特に注意が必要なのは、高齢の犬猫、肥満気味の子、鼻の短い短頭種(パグ、フレンチブルドッグ、ペルシャ猫など)です

これらの動物は体温調節がさらに苦手で、熱中症を発症すると回復も遅く、命にかかわる事態になりやすいため、急激な気温変化がある時期は特に気を配った対応が必要です。

犬猫の最適な温度と湿度

適切な室温の目安は、犬猫の種類や年齢によって多少異なりますが、一般的には20-25℃前後が快適とされています。

30℃を超えるような環境では、体温をうまく下げられずに熱が体内にこもりやすくなります。

室温が高くなりがちな昼間や西日の当たる部屋では、エアコンを活用して温度管理を行いましょう。

特に留守番をさせるときは、締め切った室内が高温にならないよう必ず冷房をつけて出かけることが大切です。

 

また、湿度も見落としがちな熱中症の原因です

 

犬はパンティング(浅く速い呼吸)で熱を逃がしますが、湿度が高いと空気中に熱と水分が放出されにくくなり、効果的に体温を下げることができません。

 

湿度が60%を超えると、犬猫にとっては不快な環境になります。

理想的な湿度は40〜60%の範囲とされ、除湿機やエアコンの除湿機能を活用することでコントロールが可能です。

 

さらに、サーキュレーターや扇風機を使って室内の空気を循環させることで、冷房効率が高まり、温度・湿度ともに快適な状態を保ちやすくなります。

ただし、扇風機の風を直接犬や猫に当てすぎると、逆に体調を崩すこともあるため注意が必要です。

 

気温や湿度は一日の中でも変動するため、温湿度計を設置して定期的にチェックする習慣を持つことが大切です。

特に高齢のペット、心臓や呼吸器に疾患がある子、短頭種(パグやペルシャ猫など)は、わずかな環境変化でも大きな影響を受けやすいため、こまめな管理が求められます。

 

犬猫にとっての「快適」は人間の感じ方とは異なります。

飼い主が意識的に環境を整えることで、大切な家族であるペットたちの命と健康を守ることができます。

夏の暑さが本格化する前に、室温と湿度のコントロール方法を見直してみましょう。

水分補給の重要性と具体的な方法

熱中症予防において次に重要なのが「水分補給」です。

体内の水分が失われると体温調節が難しくなり、体内に熱がこもりやすくなります。

 

犬猫は人間ほど頻繁に水を飲まない場合も多く、特に猫はもともと水をあまり飲まない動物のため、意識的に水分を摂取させる工夫が必要です。

 

以下に、犬猫に効果的な水分補給の方法をいくつか紹介します。

新鮮な水を常に用意する

水はこまめに交換し、ぬるくなった水や汚れた水をそのままにしないよう注意しましょう。特に夏場は1日2回以上の交換が理想的です。

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複数の場所に水皿を置く

家の中にいくつかの場所に水皿を設置することで、犬や猫が水を飲む機会を増やすことができます。

特に高齢の動物や体力のない動物には有効です。

自動給水器の活用

動きのある水(循環型給水器、ファウンテン型)は、猫に特に好まれます。

ろ過されて清潔な水が常に供給されるため、飼い主にとっても安心です。

ウェットフードやスープの活用

ドライフードのみでは水分摂取が不足しがちです。

水分を多く含むウェットフードを取り入れたり、ペット用の無添加スープやゆで汁を少量加えることで、水分を自然に摂らせることができます。

氷を利用する

犬の場合は、水に氷を浮かべて与えることで、遊びながら水を飲むこともあります。

ただし、過剰な摂取や胃腸が弱い子には注意が必要です。

家で簡単にできる脱水症状チェック

水分補給をしていても、犬猫が十分に水を摂っているか不安なこともあるでしょう。

そんな時は、自宅でできる簡単な脱水チェックを行ってみましょう。以下に代表的な方法を紹介します。

首の後ろをつまむ(皮膚ツルゴールチェック)

犬猫の脱水チェックとして最も簡単で効果的なのが、「首の後ろの皮膚を軽くつまんで離す」方法です。

正常であれば皮膚はすぐに元に戻りますが、脱水状態にあると皮膚が戻るまでに時間がかかります。

歯茎の状態を確認

歯茎が乾いていたり、指で軽く押して色の戻りが遅い(通常は1〜2秒以内)場合も、脱水のサインです。

尿の色・量の変化

尿が濃く、量が少なくなっている場合は、脱水が疑われます。

特に猫ではトイレの観察が非常に重要です。

 

熱中症でなくても体調不良に

気温の上下が大きい日は、人よりも体の小さな犬や猫にはとても大きな負担となります。

梅雨時期の前後では、なぜか吐き気や下痢の症状での診察件数がとても増えます。

熱中症とまではならなくても、暑さや寒さは愛犬や愛猫の体調不良の原因になるということを知っておきましょう。

まとめ

犬や猫は、自ら体調不良を訴えることができません。

そのため、飼い主のちょっとした気づきや工夫が、ペットの命を守る大きな鍵となります。特に急に気温が上がった日や湿度が高い日は、普段以上に注意を払いましょう。

 

エアコンや扇風機などの適切な利用、通気の確保、水分摂取の促進、そして日々の観察と脱水チェックの習慣が、愛犬・愛猫の健康を守るための大切なポイントです。

何よりも大切なのは「早期発見・早期対応」です。

 

少しでも様子がおかしい、ぐったりしている、呼吸が早い、ヨダレが多いといった症状が見られたら、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。

熱中症は重症化すると短時間で命に関わる危険があります。

 

本格的な夏を迎える前に、できる対策を整えておくことで、大切な家族であるペットたちと共に、安心して夏を過ごすことができます。

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わたしたちは創立1974年以来、愛知県名古屋市内で動物病院ペットの健康管理をトータルサポートし続けています。当院は犬・猫をはじめとする小動物の診療を主体として、トリミング、しつけ教室、ペットホテル、通信販売など、さまざまなペットケアサービスをワンストップで展開しています。
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