猫の下部尿路疾患(FLUTD):症状から食事・ケアまで
「トイレで何度も踏ん張っている」「血尿が出た」
もしあなたの愛猫にこんなサインが見られたら、それは 下部尿路疾患(FLUTD:Feline Lower Urinary Tract Disease) かもしれません。
FLUTDは、猫がかかりやすい病気の一つで、膀胱から尿道にかけての「おしっこの通り道」に起こるトラブルの総称です。
この病気は猫にとって非常につらく、命に関わる緊急事態につながることもあるため、飼い主さんの早期の気づきと適切なケアが非常に重要です。
この記事では、FLUTDがどのような病気なのか、そのケアの柱となる療法食やサプリメントの選び方について、詳しく解説します。
下部尿路疾患(FLUTD)とはどんな病気?
FLUTDとは、猫の膀胱(おしっこを溜める袋)や尿道(おしっこを外に出す管)に炎症や閉塞などの異常が起こる病気の総称です。
FLUTDは主に以下のような病態があります。
特発性膀胱炎
原因不明の膀胱炎で、FLUTDの中で最も多いタイプです。
特定の原因が見つからないため「特発性」と呼ばれますが、ストレスが深く関わっていると考えられています。
膀胱の内側を保護する粘膜(グリコサミノグリカン層)が傷つき、尿が染み込むことで炎症が起こります。
尿石症
ミネラル成分が結晶化し、砂粒や石のような塊(尿石)となって、膀胱や尿道にできる病気です。
主な尿石の種類には、ストルバイト(マグネシウム、リン、アンモニアが結合したもの)とシュウ酸カルシウムがあります。
これらの尿石が膀胱内で炎症を起こしたり、尿道に詰まったりします。
尿道閉塞
膀胱で作られた尿石や、炎症で剥がれた細胞、粘液などが混ざり合った「尿道栓子(にょうどうせんし)」が尿道に詰まってしまう状態です。
特に雄猫は尿道が細長いため閉塞しやすく、おしっこが出せなくなるため、数日で命を落とす可能性のある緊急事態です。
感染性膀胱炎
細菌が膀胱に入ってしまって起きる病気です。
猫では発生は少ないと言われているのですが、高齢の猫や持病のある猫など免疫力が下がっている猫では発生することがあります。
見逃せないサイン!
以下の症状が一つでも見られたら、すぐに動物病院を受診してください。
頻尿・排尿困難:トイレに何度も行く、一回の量が少ない、トイレで長時間踏ん張っている、痛がって鳴く。
血尿:おしっこにピンク色や赤色の血が混ざる。
不適切な排泄:普段しない場所(カーペット、お風呂場など)で排泄してしまう。
排尿姿勢の変化:立ったままおしっこをするなど、普段と違う姿勢。
陰部を舐める:痛みや違和感から、陰部を気にして頻繁に舐める。
おしっこが全く出ていない:膀胱がパンパンに張っているのに、おしっこが出ていない。
特に 「おしっこが全く出ない」 場合は、迷わず救急対応が必要です。
治療の柱:療法食(食事療法)の役割と選び方
FLUTDの治療において、 食事の見直し(療法食) は最も重要な柱の一つです。
特に尿石症や特発性膀胱炎の再発予防には欠かせません。
療法食が病気に効く理由
療法食は、特定の病態に合わせてミネラルバランスや栄養成分が調整されています。
pHコントロール:尿石(ストルバイト)を溶かすために、尿のpH(酸性度)を弱酸性に調整します。
ネラル制限:尿石の原料となるマグネシウムやリンなどのミネラル成分を制限します。
水分量の調整:ドライフードでも水分摂取を促すよう工夫されたものや、ウェットフードで積極的に水分を摂取させ、尿を薄め、結石ができにくい環境を作ります。
ストレス対策:特発性膀胱炎の原因となるストレスを軽減するための成分(L-トリプトファンなど)が配合されているものもあります。
フードの紹介と選び方
猫のFLUTDケアの代表的な療法食の一つに、ヒルズ プリスクリプション・ダイエット c/d マルチケアがあります。
<c/d マルチケアの特徴>
c/d マルチケアは、ストルバイト結石の溶解と、ストルバイト・シュウ酸カルシウム両方の再発を予防するために設計された総合的なケアフードです。
・ストルバイトとシュウ酸カルシウムの生成に必要なミネラルを調整し、結石の発生リスクを低減。
・尿のpHを弱酸性に保ち、ストルバイト結石を溶かす環境を作る。
・オメガ-3脂肪酸で膀胱の炎症を抑えるサポートをする。
<c/d マルチケアの種類>
魚の風味で食いつきが良いのが特徴。一般的なFLUTDケア全般に。
ストレスケアを重視した製品。特発性膀胱炎(FIC)の原因となるストレスが強く関わっている猫に適しています。
ミルク由来の成分「加水分解カゼイン」が配合されており、愛猫の不安や興奮を和らげる働きをサポートします。
FLUTDケアと同時に、体重管理が必要な肥満傾向の猫に適しています。体重をコントロールすることで、病気の悪化リスクを軽減します。
水分摂取を増やしたい場合に最適です。尿を薄めることで結石ができにくくなります。
療法食は必ず獣医師の指示に従って
飼い主さんが最も理解しておくべきことは、療法食は必ず獣医師にすすめられたものを与えるということです。
【その理由】
診断に基づく選択:FLUTDの原因がストルバイトなのか、シュウ酸カルシウムなのか、それとも特発性膀胱炎なのかによって、最適なフードは異なります。
間違ったフードを選ぶと、病気が悪化する可能性があります(例:シュウ酸カルシウムの猫にストルバイト用のフードを与えると、結石が増加するリスクがある)。
特定の成分調整:療法食はミネラルなどが厳密に制限されているため、健康な猫や成長期の子猫に与えると栄養不足になる恐れがあります。
治療経過の確認:療法食を与え始めた後も、定期的な尿検査などで効果を確認し、必要に応じてフードの種類や量を見直す必要があります。
自己判断せずに、必ず動物病院で愛猫の状態を正確に診断してもらい、適切なフードを処方してもらいましょう。
治療をサポートするサプリメント
療法食に加えて、獣医師の判断で特定のサプリメントが推奨されることがあります。
サプリメントはあくまで食事や治療の補助であり、単体で病気を治すものではありません。
ここでは、FLUTDのケアでよく使われるサプリメントを紹介します。
<ウロアクト プラス(カプセル)>
「ウロアクト プラス」は、FLUTD、特に特発性膀胱炎(FIC)や膀胱炎の再発予防をサポートするために使用されることの多いサプリメントです。
・ウラジロガシエキス:体内の不要な物質の排出をサポートし、利尿作用などが期待されます。
・酵母細胞壁(マンナンオリゴ糖):腸内環境を整えることで、体全体の免疫維持をサポートします。
・N-アセチルグルコサミン:膀胱の粘膜(グリコサミノグリカン層)の構成成分であり、傷ついた膀胱粘膜のバリア機能回復をサポートします。FICで傷ついた粘膜のケアに役立ちます。
特徴:カプセルタイプで、フードに混ぜたり、カプセルのまま与えたりできます。
<ウロアクト シロップ(リキッド)>
「ウロアクト シロップ」は、上記のウロアクトプラスの主要成分に加えて、水溶性のビタミンなどを配合した液状(シロップ)タイプのサプリメントです。
特徴:カプセルや錠剤の服用が苦手な猫でも、ごはんに混ぜやすく、シリンジなどで直接与えやすいのがメリットです。
特に食欲が落ちている猫や、飲水量を増やしたい猫に液体で与えることで、水分補給のサポートにも役立ちます。
サプリメントについても、愛猫の病状や体調に合わせて、必ず獣医師に相談してから使用を開始してください。
環境改善:ストレスケアと水分補給
FLUTDの特に大きな原因の一つはストレスと水分不足です。
療法食やサプリメントと並行して、日々の生活環境を見直すことが再発予防の鍵となります。
まとめ
猫の下部尿路疾患は命にもかかわる病気であり、猫本人はとても辛いので、すぐに異変に気づいて治療を開始しなければなりません。
また再発することも多い病気のため、治療食やサプリメントを組み合わせて再発防止に勤めましょう。



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