2025.05.07健康

犬の痒みと皮膚トラブルについて

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自分の身体を掻く柴犬
犬にとって「皮膚」は、単なる外界との境界ではなく、体温調節や免疫、防御といった重要な役割を担う器官です。

特に、痒みを引き起こす皮膚トラブルは、犬のQOL(生活の質)に大きな影響を与える問題です。

近年、犬の皮膚病は増加傾向にあり、乾燥肌、敏感肌、皮膚バリア機能の破綻、アトピー性皮膚炎、さらにマラセチア感染といった複合的な問題が密接に絡み合っています。

日々の診察では特に、柴犬とフレンチブルドッグ、そしてシーズーの飼い主さんに皮膚トラブルについて説明することが多いです。

またそれ以外の犬種でも体質的に皮膚が繊細な子も多く、皮膚トラブルへの対処を知っておいてもらいたいです。

この記事では、それらの関連性を解きほぐしながら、犬の痒みのメカニズムと対策について詳しく解説していきます。

 

乾燥肌と敏感肌

犬の皮膚は人間よりも非常に薄く、表皮の厚みは人の約5分の1程度と言われています。

そのため、外部刺激に対するバリア能力は弱く、環境の変化に敏感に反応します。

特に、空気が乾燥する季節や、エアコンの効いた室内環境に長時間いることで、皮膚の水分が失われ、乾燥肌になりやすくなります。

乾燥肌は皮膚のバリア機能を低下させ、さらに皮膚を刺激から守る皮脂膜も減少するため、敏感肌へと進行するリスクを孕んでいます。

敏感肌になると、普段なら問題にならないような些細な刺激(例えば、草むらを歩いた、シャンプーした、空気の温度が変わったなど)でも強い痒みや炎症を引き起こすようになります。

 

皮膚バリア機能の重要性

皮膚バリアとは、外界の異物や病原体から体を守り、内部の水分が失われないようにする防御システムです。

このバリアは、皮膚表面の角質層、皮脂、そして皮膚常在菌によって構成されています。

乾燥や敏感肌によってこのバリアが壊れると、皮膚は直接外部刺激を受けやすくなり、アレルゲンや細菌・真菌の侵入が容易になります。

このような状態を放置すると、慢性的な皮膚炎やアレルギー反応を引き起こす原因になります。

さらに、皮膚バリア機能の低下は、皮膚常在菌のバランスにも影響を与えます。

本来、健康な皮膚には善玉菌が多く存在し、病原菌の増殖を抑えています。

しかし、バリアが壊れることで、悪玉菌やカビ(マラセチアなど)が異常繁殖し、さらなる皮膚トラブルを引き起こしてしまうのです。

 

犬のアトピー性皮膚炎と皮膚バリア

犬のアトピー性皮膚炎は、遺伝的素因に加え、皮膚バリア機能の破綻が発症に深く関与していると考えられています。

もともと皮膚バリアが弱い体質の犬に、環境中のアレルゲン(ハウスダスト、花粉、カビ、食物など)が侵入することで、免疫系が過剰反応を起こし、強い痒みと慢性的な皮膚炎を発症します。

アトピー性皮膚炎の初期症状としては、顔周り、耳、足先、腹部などに痒みが出始めることが多く、かきむしる、舐め続ける、擦り付けるといった行動が見られます。

悪化すると皮膚は赤くただれ、脱毛や色素沈着を伴うようになります。

この病気では、皮膚バリアの補強が治療の一環となります。

単なる痒み止めやステロイドによる対症療法だけではなく、シャンプー療法、保湿ケアや皮膚バリアを強化するサプリメントスキンケア製品の併用が重要視されます。

 

マラセチア皮膚炎との関係

マラセチアとは、犬の皮膚に常在しているカビの一種、酵母とよばれるばい菌です。

通常は皮膚に害を及ぼすことはありませんが、皮膚バリアが壊れ、湿度や脂質の多い環境が整うと急激に増殖します。

そして、これが「マラセチア皮膚炎」と呼ばれる病気を引き起こします。

マラセチア皮膚炎の典型的な症状には、強い痒み、赤み、脂漏(皮脂の分泌過多)、独特の臭いが挙げられます。

耳に感染が起これば外耳炎を引き起こし、耳が赤く腫れて悪臭を伴うこともあります。

特に、脂分を多く分泌する犬(シーズー)ではマラセチア皮膚炎を併発しやすく、痒みがさらに悪化する悪循環に陥ることが多いです。このため、マラセチアの増殖が認められた場合は、抗真菌薬の使用や専用シャンプーによる治療が必要になります。

 

総合的な管理と対策

犬の痒み対策には、単に症状を抑えるだけでなく、皮膚バリアを守り、原因菌やアレルゲンの管理を行うことが不可欠です。具体的には、以下のような総合的なアプローチが推奨されます。

  • 保湿ケア

乾燥を防ぐために、皮膚に優しい保湿剤や保湿シャンプーを使用します。

 

  • 食事管理

 皮膚の健康に配慮した高品質なフード(オメガ3脂肪酸、ビタミンE配合など)を選び、内側からバリア機能をサポートします。

 

  • 環境アレルゲンの管理

 室内のハウスダスト対策、適切な湿度管理などを行います。

 

  • スキンケアの見直し

刺激の強いシャンプーや頻繁な入浴は皮膚バリアを壊す原因になります。

獣医師の指導のもと、適切な製品を選び、正しい方法で洗浄を行うことが重要です。

 

  • 定期的な健康チェック

 皮膚病は早期発見・早期治療が鍵です。かゆみや異常を感じたらすぐに獣医師の診察を受けましょう。

 

こんな皮膚トラブルがありました

実際にあった皮膚トラブルの症状と、対処法について解説します。

 

  • パッドを舐め壊して足の裏が真っ赤になる

パッドを舐め壊して、皮膚トラブルが起きている犬はとても多いです。

体質的に皮膚が繊細なタイプは指間皮膚炎(しかんひふえん)になっており、その場所でマラセチアの増加が認められることが多いです。

最初は暇だったから舐めてしまっただけなのかもしれません。

しかし舐めることによって、皮膚に炎症がおきて、さらに痒くなり、また舐めてしまって炎症が起きるという悪循環から抜け出せなくなっています。

 

まず、痒いのは人も犬も辛いので、痒みを抑えるという治療がとても大切です。

そのためには、痒み止めやステロイドの塗り薬が有効でしょう。

 

ただしそれだけでは原因(ばい菌やアレルゲン)が野放しになっているので、おうちでのケアが重要になってきます。

まずは皮膚の足先だけでも頻回にシャンプーをします。

痒みの原因になるばい菌やアレルゲンを減らしてあげましょう。

さらに、獣医師と相談して、保湿が必要なら足先も保湿剤を使用しましょう。

 

そしてある程度まで皮膚バリアが回復するまでは、舐めさせないことが大切です。

そのため、足先を舐めないようにカラーを利用しましょう。

カラーもたくさんの種類があり、ドーナツタイプのものや布製のものなど様々です。

ぜひストレスの少ないものを選んでください。

 

 

フケが目立つので洗ったらもっとフケが出てきた

黒い毛色の犬では、フケが出ると目立ってしまうため、頻回にシャンプーされてしまうことがあります。

あまりにシャンプー回数が多いと、皮膚バリアがはがされてしまって、逆にフケが増えてしまいます。

あるいは脱脂作用(皮膚の脂分を減らす作用)が強いシャンプーでは、一回の使用でも皮膚がカサカサになってしまって痒みが出ることもあるので注意が必要です。

シャンプーの回数や脱脂作用の強さによって、シャンプー後には保湿剤が必須なケースがあります。

皮膚トラブルを避けるためにも、シャンプー後の保湿は大切です。

ただし、皮膚病の治療をしている場合は保湿剤で皮膚状態が悪化する可能性もあるので、かならず担当医に確認してシャンプー剤や保湿剤を使用しましょう。

 

登記臣院長
登記臣院長
当院出身の愛玩動物看護師がプロデュースしたワンちゃん用の保湿剤をご紹介します。かかりつけの獣医師と相談しながら、保湿剤を使用してみましょう。


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まとめ

犬にとって、皮膚の健康は心身の健康に直結しています。

乾燥肌や敏感肌の段階でしっかりとケアを行うことで、掻き壊しや全身的な湿疹といった深刻な皮膚病を未然に防ぐことができます。

飼い主として、日々の観察と丁寧なスキンケアを心がけ、大切な家族である犬たちが快適な毎日を過ごせるようサポートしていきましょう。

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松波動物メディカル通信販売部本店公式ブログ

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わたしたちは創立1974年以来、愛知県名古屋市内で動物病院ペットの健康管理をトータルサポートし続けています。当院は犬・猫をはじめとする小動物の診療を主体として、トリミング、しつけ教室、ペットホテル、通信販売など、さまざまなペットケアサービスをワンストップで展開しています。