何種ワクチンが必要?犬のワクチンとレプトスピラ症の話
ワクチン接種の診察では「何種のワクチンを接種したら良いですか?」というご質問をよく受けます。
混合ワクチンは5種混合から10種混合まで、多くの種類があるので皆さんとても迷われます。
7種以上のワクチンでは多くはレプトスピラ菌を何種含むかで数字が増えています。
そのレプトスピラ症という病気は水辺で感染するリスクが高い病気です。
だんだんと愛犬と一緒に自然の中へお出かけするのが楽しい季節になり、川遊びやキャンプ、散歩など、行動範囲が広がるでしょう。
そこで飼い主として忘れてはいけないのがレプトスピラなどの「感染症対策」です。
重要な点はレプトスピラ症は人にも犬にも感染する厄介な病気だというところです。
今回は、その犬のレプトスピラ症と、予防に欠かせないワクチンについて詳しくお話しします。
そもそも犬にワクチンはなぜ必要?
犬も人間と同じように、さまざまな感染症にかかるリスクを持っています。
その中には、命に関わる重篤な病気や、人間にもうつる病気(人獣共通感染症)もあります。
ワクチンは、これらの病気に対して犬の体に「免疫」を作り、万が一感染した場合でも重症化を防いだり、感染そのものを予防したりするための重要な手段です。
また、多くの犬たちが集まる場所(ドッグラン、ペットホテル、トリミングサロンを利用する犬など)は、ワクチン接種が必須条件となっていることがほとんどです。
これは、個体を守るだけでなく、集団の中で感染症を広げないための配慮でもあります。
- 犬のワクチンには種類がある
犬用ワクチンには大きく分けて「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」の2種類があります。
【コアワクチン】
すべての犬に接種が推奨される基本的なワクチンです。
命に関わる重篤な感染症を予防します。
- 犬ジステンパーウイルス感染症
- 犬パルボウイルス感染症
- 犬アデノウイルス感染症(犬伝染性肝炎)
【ノンコアワクチン】
犬の生活環境やライフスタイルに応じて接種を考えるワクチンです。
- 犬レプトスピラ症
- 犬パラインフルエンザウイルス感染症
- 犬コロナウイルス感染症
レプトスピラ症のワクチンはこのノンコアワクチンに分類されますが、近年ではアウトドアレジャーの増加や自然災害による感染リスクの上昇から、接種を強く勧めるケースも増えています。
犬のレプトスピラ症とは?
レプトスピラ症は、レプトスピラ菌による感染症で、犬にとっても命に関わる重大な病気です。
感染した犬は腎臓や肝臓に重い障害を起こすことがあり、適切な治療を受けなければ死亡するリスクもあります。
【主な感染経路】
- 感染動物の尿に汚染された水や土に触れる
- 感染動物を咬んだり、死骸を舐めたりする
- 感染動物の尿に直接触れる
特に野生動物(ネズミ、イタチなど)の尿が感染源となるため、自然の中で遊ぶ機会が多い犬は要注意です。
犬のレプトスピラ症の症状
犬がレプトスピラ症に感染すると、次のような症状が現れます。
ただし、感染しても無症状だったり、軽い症状しか出ない場合もあるため、注意が必要です。
【代表的な症状】
- 元気消失、食欲不振
- 嘔吐、下痢
- 黄疸(歯茎や白目が黄色くなる)
- 血尿
- 呼吸困難
- けいれん、ふらつき
腎不全や肝不全に進行すると命に関わるため、早期発見と迅速な治療が非常に重要です。
レプトスピラ症は人間にも感染する
犬のレプトスピラ症が怖いのは、犬自身が重症化するだけではありません。
感染した犬の尿などを介して、飼い主や家族にも感染するリスクがあるのです。
ヒトのレプトスピラ症も重篤化すると、肝臓や腎臓に障害を起こし、最悪の場合は死亡することもあります。
家族全員の健康を守るためにも、愛犬の予防対策は欠かせません。
犬のレプトスピラ症はワクチンで防げる!
犬用ワクチンにはレプトスピラ症を予防するためのものがあります。
ただし、レプトスピラ菌には多くの血清型(種類)があり、すべてに対して有効なワクチンは存在しませんが、リスクを下げるには接種が推奨されています。
【レプトスピラワクチンの特徴】
- 毎年接種が必要(効果が長く続かないため)
- 多くは混合ワクチンに含まれる
- 生活環境によって接種するべきか相談する
7種以上の混合ワクチンにはレプトスピラに対応した成分が含まれていることが多いです。
特にアウトドア活動が多い犬や、水辺に行く機会がある犬は、レプトスピラワクチン接種を検討しましょう。
ワクチン接種時に気を付けたいこと
愛犬の混合ワクチンの接種で来院された飼い主さんに、問診の時点で聞くのは
「今日はワンちゃん一人でお留守番ではなく、体調の変化を見てらえる人はいますか?」
という点です。
このようにワクチン接種ではいくつかの注意点があるので、以下で確認してみましょう。
【接種時の注意点】
- 体調が万全なときに接種する
- できれば午前中に接種する
- 接種後は安静にし、急な副反応に備える
体質によっては、アレルギー反応(顔の腫れ、嘔吐、下痢、ショック症状)が出ることがあるため、接種後はしばらく様子を見るようにしましょう。
午後の診察時間の最後に接種して、その後に体調不良になっても動物病院が診察を終了してしまっていては、対応してもらえないかもしれません。

命にかかわる状態ですので、すぐに治療しなければなりません。
夜間病院を探したりする事態にならないように、ワクチン接種は午前中を推奨しています。
アレルギー体質を持つ犬などはワクチン接種のリスクと感染症リスクを天秤にかけて、獣医師と相談の上で接種の可否を判断する必要があります。
ワクチン接種後の安静とは
「今日は安静にしてくださいね」とワクチン接種後に必ず言い添えるのですが、具体的に安静というものを伝えていなかったために体調不良になってしまった例をお伝えします。
- ワクチン接種後に遠くのショッピングモールへ
ワクチン接種後に車でショッピングモールへ行き、ドライブ中に嘔吐。
吐いてしまったが、それが車酔いかワクチン接種後の副反応かわからない。
確かに犬は車の中にいただけなので、運動したわけではありませんが、慣れないドライブで興奮状態にあったかもしれないとのことです。
まず、ワクチン接種後にいつもと違うことをしないようにしましょう。
平日に休みをとってワクチン接種をして、その後の時間を活用したい気持ちはわかりますが、その日は家で愛犬とゆっくり過ごす日にしましょう。
- ワクチン接種後に走って帰宅
病院が怖すぎて、病院を出たら走って帰宅したがる犬もいます。
しかし走ってしまうと、安静とはほど遠い結果となります。
さらに暑い日であった場合には、帰宅後の体調不良が熱中症なのかワクチン接種による副反応なのかが分からなくなることも。
あまりに興奮してしまう性格であれば、ワクチン接種はキャリ―やバギーでの来院をお勧めしています。
まとめ
これからの行楽シーズン、愛犬と一緒に自然を満喫するのは最高の時間です。
ですが、その楽しみの裏に感染症のリスクが潜んでいることも忘れてはいけません。
レプトスピラ症は犬にも人にも重大な影響を及ぼす病気です。
しかし、適切なワクチン接種によって大きなリスクを防ぐことができます。
ワクチンにはたくさんの種類があり、どれが最適なのか決めかねるかと思いますので、かかりつけの先生と相談して決めましょう。
またワクチン接種後に体調不良が出ないためにも、その日一日は家で安静にしていることをお勧めします。
愛犬との楽しい時間を守るためにも、ワクチンでしっかりと感染症から身を守りましょう!


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