獣医師が教える下痢の原因・治療法とビオイムバスター・ディアバスターの効果
愛犬や愛猫が下痢をすると、飼い主様は「病院に連れて行くべきか」「様子を見ていても大丈夫か」と不安になることが多いでしょう。
下痢は犬猫において比較的よく見られる症状ですが、軽度なものから生命に関わる重篤なものまで幅広く存在します。
今回は、獣医師の立場から下痢の原因、腸内環境の重要性、そして治療薬であるビオイムバスターとディアバスターの適切な使い方について詳しく解説いたします。
便の状態による重症度の判断
たかが下痢、されど下痢というもので、軽度な下痢からすぐに受診が必要な重症なものまで様々です。
下痢の重症度は便の性状を参考にすることが多いです。
- 軟便:形は保たれているが柔らかい状態(軽度)
- 泥状便:泥のような状態(中等度)
- 水様便:ほぼ液体状態(重度)
- 血便・粘液便:血液や粘液が大量に混入(要注意)
特に血便や粘液が大量に混じった便が見られる場合は、消化器系に重篤な問題が生じている可能性が高く、緊急の対応が必要です。
下痢と腸内環境の重要性
健康な腸内環境には、善玉菌、悪玉菌、日和見菌がバランス良く存在しています。
このバランスが崩れると、以下のような問題が生じます。
- 消化機能の低下:食物の分解・吸収能力が損なわれる
- 免疫機能の低下:病原菌に対する抵抗力が弱くなる
- 炎症反応の増大:腸粘膜の炎症が慢性化する
- 栄養素の吸収障害:必要な栄養素が十分に吸収されない
特に犬猫においては、ストレス、食事の変更、抗生物質の使用などが腸内細菌叢のバランスを容易に乱すため、日常的な腸内環境のケアが重要です。
年齢別の下痢の特徴と対策
一回の下痢でも、体の大きさや、幼さによって、下痢による消耗が変わってきます。
特に子犬や高齢で持病のある動物は下痢で重症になりやすいことを知っておきましょう。
子犬・子猫の下痢
幼齢動物の下痢は特に注意が必要です。
新しい環境への適応ストレスに加え、寄生虫感染やウイルス感染のリスクが高いためです。
《主な原因》
- 環境変化によるストレス
- 寄生虫(回虫、コクシジウムなど)
- ウイルス感染(パルボウイルス、ロタウイルスなど)
- 食事の不適切な管理
《対策》
幼齢動物では脱水や低血糖が急速に進行するため、下痢が見られた場合は速やかに獣医師に相談することが重要です。
絶食は避け、適切な水分補給を心がけましょう。
滴下タイプの寄生虫駆除>>プロフェンダースポット
7週齢、500g以上の子猫から投与できます。
獣医師の指示の元、使用をご検討下さい。
成犬・成猫の下痢
成犬・成猫では、一回の下痢や軟便で大きな問題になることは少ないですが、何回も下痢が出てしまう場合には体力が消耗してしまいます。
また慢性よりも急性の下痢が多く見られます。
《主な原因》
- ストレス(旅行、来客、留守番、気温の上下など)
- 食事の急激な変更
- 誤食・拾い食い
- 食物アレルギー
《対策》
エアコンは積極的に使用しましょう。
ホテルの利用は、短期間から徐々に慣れていくようにしましょう。
フードの変更は2週間程度かけて徐々に行い、散歩時の拾い食いに注意を払うことが予防につながります。
高齢犬・高齢猫の下痢
高齢動物では、基礎疾患に伴う下痢が増加します。
腎不全を持っているような動物が下痢によって脱水になると、急性腎不全になることがあります。
《主な原因》
・ 膵外分泌不全
・ 内臓の機能障害
・ ホルモン疾患
・ 腫瘍性疾患
《対策》
定期的な健康診断による早期発見と、体力低下を防ぐための迅速な治療が重要です。
高齢動物は脱水になりやすいので、診察を受けて点滴治療も相談しましょう。
家庭でできる応急処置
元気や食欲がしっかりとあって、1回の下痢であれば、まずは家でできることを実施しましょう。
観察のポイント
下痢が起こった際は、以下の点を注意深く観察しましょう
- 下痢の回数と性状
- 食欲の有無
- 元気の程度
- 嘔吐の有無
- 体温の変化
- その他の症状(震え、ぐったりしているなど)
応急処置の方法
安静にする:
激しい運動は避け、なるべく静かな環境で過ごさせましょう。
シャンプーなどで体を濡らすことも避けてください。
食事の調整:
軽度の下痢の場合は、食事量を半分程度に減らし、ドライフードはふやかして与えましょう。
重度の下痢では、一時的な絶食が有効な場合もありますが、幼齢動物や猫では安易に食事を抜かずに獣医師の指示に従ってください。
水分補給:
脱水を防ぐため、新鮮な水を常に用意し、特に猫では複数の水場を設置することが推奨されます。
ビオイムバスターの特徴と使用法
基本情報と成分
ビオイムバスターは、有胞子性乳酸菌とパンクレアチンを主成分とする動物用医薬品です。投与することによって腸内環境の改善と消化機能の補助に重要な役割を果たします。
有胞子性乳酸菌は、胃酸に強く生きたまま腸まで届く特殊な乳酸菌で、腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を正常化する働きがあります。
パンクレアチンは膵臓から分泌される消化酵素で、タンパク質、脂質、炭水化物の消化を助けます。
効能・効果
- 食欲不振
- 消化不良
- 単純性下痢
使用方法
投与量(1日2回経口投与)
犬:
・ 20kg以上:3錠
・ 5kg以上20kg未満:2錠
・ 5kg未満:1錠
猫:
・ 3kg以上:1錠
・ 1kg以上3kg未満:1/2錠
・ 1kg未満:1/4錠
適用症状と期待される効果
ビオイムバスターは以下のような症状に特に効果的です。
食欲不振時:
消化酵素の補給により食物の消化吸収が改善され、食欲の回復が期待できます。
消化不良による軟便:
パンクレアチンが消化を助け、有胞子性乳酸菌が腸内環境を整えることで、便の性状が改善されます。
ストレス性の軽度下痢:
腸内細菌叢のバランスを整えることで、ストレスによる消化器症状の改善が期待できます。
抗生物質使用後の腸内環境回復:
抗生物質治療により乱れた腸内細菌叢の回復を促進します。
使用上の注意
・ 豚、魚、牛乳由来の成分を含むため、これらのアレルギーがある動物では注意が必要です。
・ 長期使用による重篤な副作用の報告はありませんが、症状が改善しない場合は獣医師に相談してください。
ディアバスターの特徴と使用法
基本情報と成分
ディアバスターは、5種類の有効成分を配合した動物用医薬品で、タンニン酸ベルベリン、次硝酸ビスマス、ゲンノショウコ乾燥エキス、五倍子末、ロートエキス散が含まれています。
これらの成分は協働して腸の運動を調整し、下痢症状を改善します。
効能・効果
- 下痢における症状改善
- 腹痛
- 疝痛
使用方法
投与量(1日2回経口投与)
犬:
・ 20kg以上:3錠
・ 5kg以上20kg未満:2錠
・ 5kg未満:1錠
猫:
・ 3kg以上:1錠
・ 1kg以上3kg未満:1/2錠
・ 1kg未満:1/4錠
適用症状と期待される効果
ディアバスターは以下のような症状に特に効果的です。
水様下痢:
腸の過剰な運動を抑制し、水分の吸収を促進することで下痢を止めます。
大腸性下痢:
炎症を抑制し、腸粘膜を保護することで症状を改善します。
腹痛を伴う下痢:
鎮痙作用により腸の痙攣を和らげ、腹痛を軽減します。
感染性腸炎の補助治療:
抗菌作用のある成分が含まれており、細菌性腸炎の治療をサポートします。
使用上の注意
次硝酸ビスマスの影響で便が黒くなることがありますが、健康上の問題はありません。
魚由来の成分を含むため、魚アレルギーのある動物では注意が必要です。
症状が改善しない場合や長期使用が必要な場合は、根本的な原因の精査が必要です。
予防と日常管理
下痢にならないように日常からケアしていくことが愛犬や愛猫の健康を維持することにつながります。
具体的にどのような点に注意しておけば良いか、以下に解説します。
食事管理
フードの質:
総合栄養食と表記してある消化しやすいフードを選び、急激な変更は避けましょう。
給餌方法:
規則正しい時間に適量を与え、早食いを防ぐための工夫(回数やお皿)も有効です。
食物アレルギー対策:
アレルギーが疑われる場合は、除去食や療法食の検討が必要です。
※療法食は、必ずかかりつけの獣医師の診断と指導のもとで給与して下さい。
環境管理
ストレス軽減:
快適な温度を保つことや、適切な運動量をとることが大切です。
衛生管理:
食器や水入れの清潔を保ち、新鮮な水を常に用意してください。
獣医師への相談タイミング

- 血便や粘液便
- 激しい嘔吐を伴う下痢
- ぐったりして元気がない
- 食欲が全くない
- 発熱が見られる
- 下痢が3日以上続く
- 幼齢動物や高齢動物の下痢
まとめ
犬猫の下痢は、軽度なものから重篤なものまで様々な原因で発生します。
腸内環境の維持は消化器の健康だけでなく、全身の健康にも重要な役割を果たします。
ビオイムバスターは腸内環境の改善と消化機能の補助に、ディアバスターは急性の下痢症状の改善に効果的です。
しかし、これらの薬剤は症状の改善を目的としたものであり、根本的な原因の治療には獣医師による適切な診断と治療が不可欠です。
愛犬・愛猫の健康維持のため、日常的な観察と予防的なケア、そして適切なタイミングでの受診を心がけることが最も重要です。
症状が見られた際は、自己判断せず、獣医師に相談することをお勧めします。


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