犬がスキップするのは癖?関節疾患?
元気で活発な犬が散歩中や遊んでいる最中に「スキップ」のような動きを見せることがあります。
片足を一瞬浮かせて軽やかに跳ねる様子は可愛らしく、思わず笑顔になってしまう飼い主さんも多いでしょう。
しかし、この「スキップ」がただの癖なのか、はたまた何か体に異常があるサインなのか、判断に迷うことも少なくありません。
日々の診察のなかでも、スキップが大きな問題のない行動なのか、あるいはケガの症状の一つなのか、すぐに判断できません。
この記事では、犬がスキップする行動について、正常な場合と異常を疑うべき場合の違い、特に膝蓋骨脱臼(通称パテラ)や関節炎といった疾患との関係、検査を受けるべきタイミング、注意して観察すべきポイント、さらにサプリメントによるサポート方法について詳しく解説します。
犬のスキップ行動とは?
「犬のスキップ」とは、歩行中に一瞬、片方の後肢を浮かせて跳ねるように前進する動作を指します。
スキップの頻度や様子には個体差があり頻度としては以下のようなパターンがあります。
- ごくたまに片足を浮かせるだけ
- 数歩に1回スキップする
- 長い距離をスキップしながら走る
この行動が見られた場合、まず考えるべきは「癖」か「異常」かの見極めです。
ただの癖である場合
一部の犬、特に若齢犬や活発な性格の犬では、スキップが単なる癖として見られることがあります。
<癖の場合の特徴>
- 元気よく走ったり跳ねたりしている最中に見られる
- 痛みを感じている様子がない
- しばらくすると通常の歩き方に戻る
- スキップ後も運動や遊びを続けたがる
このような場合、特に痛みや歩様の悪化がなければ、様子を見ても問題ないことが多いです。
ただし、癖と断定するためには、慎重な観察が必要です。
異常が疑われる場合:関節炎と膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)
犬のスキップが、実は関節や足先の異常のサインである場合もあります。
特に注意すべきなのは、膝蓋骨脱臼(通称パテラ)と関節炎(変形性関節症)です。
膝蓋骨脱臼(パテラ)
膝蓋骨(パテラいわゆる膝のお皿)が正常な位置から外れる病態で、小型犬種に非常に多く見られます。
若い犬のスキップは、膝蓋骨が脱臼した際、痛みや違和感から足を一時的に浮かせることで起こると考えられています。
<膝蓋骨脱臼が疑われるサイン>
- スキップ後、急に歩き方がぎこちなくなる
- 足を着地させずに走る
- 足を伸ばしたり振ったりしている様子が見られる
- 慢性的に後肢の筋肉量が減少している
- 階段の昇り降りを嫌がる
膝蓋骨脱臼は進行すると、重度の関節炎や痛みを引き起こし、日常生活に支障をきたすため、早期発見・早期対策が重要です。
関節炎(変形性関節症)
特にシニア犬に多く見られる疾患で、関節の軟骨がすり減ることで炎症や痛みを伴います。
このため、痛みを避けるために足をかばうように歩くことがあり、スキップ動作に似た歩様になることがあります。
<関節炎が疑われるサイン>
- 朝起きた直後に歩き方がぎこちない(ウォーミングアップで改善する)
- 散歩を嫌がる
- 立ち上がるのに時間がかかる
- 関節部位に熱感や腫れがある
関節炎も放置すると、慢性的な痛みや可動域制限を引き起こし、生活の質(QOL)を大きく低下させます。
検査を受けるべきタイミング
以下のような場合には、獣医師の診察を早めに受けるべきです。
- スキップの頻度が増えてきた
- スキップの後に痛がる、動きたがらない
- 足を触ると嫌がる、キャンと鳴く
- 歩き方に左右差がある
- 運動後に足をかばう仕草が増えた
- 高齢犬で急に歩き方に変化が出た
診察では、触診に加え、X線検査や場合によっては関節鏡検査(内視鏡)などが行われ、原因を特定します。
観察すべきポイント
犬のスキップを見たときには、以下の点に注意して観察しましょう。
<観察ポイント:チェックする内容>
- どの足か:右後肢?左後肢?
- タイミング:走っているとき?歩いているとき?
- 頻度:毎回?たまに?
- 痛みの兆候:足を舐める、触ると怒る
- 持続時間:すぐ戻るか?長引くか?
- 運動後の様子:元気か、疲れやすいか
- その他の動作異常:ふらつき、ジャンプを嫌がる
これらを記録しておくと、診察時に非常に役立ちます
サプリメントによるサポート
膝や関節の健康を守るために、サプリメントを上手に取り入れるのも有効です。
代表的な成分には次のようなものがあります。
軟骨の主成分で、摩耗や変性を防ぐ効果が期待される。
軽度〜中程度の関節炎、膝蓋骨脱臼の予防・進行抑制が期待される。
<MSM(メチルスルフォニルメタン)>
抗炎症作用があり、痛みを和らげる効果が期待される。
<緑イ貝エキス>
抗炎症作用+オメガ-3脂肪酸を含み、関節の柔軟性を保つ。
<オメガ-3脂肪酸(EPA・DHA)>
抗炎症作用を持ち、関節の腫れや痛みを軽減する効果がある。
サプリメント選びのポイント
市販されているサプリメントはあまりにも種類が多いために、どれを選んだらよいのか迷われる方が大半です。
そこで以下の判断基準を覚えておきましょう。
- 信頼できるメーカーの製品を選ぶ
- 含有量・配合バランスを確認する
- 継続摂取できる味・形状(粉末、タブレットなど)を選ぶ
- 獣医師と相談して使用する
困ったら動物病院で出してもらえるサプリメントにするのが良いです。
成長期やシニア期、膝蓋骨脱臼のリスクが高い犬種(トイプードル、チワワ、ポメラニアンなど)は、予防的にサプリメントを活用することも推奨されます。
<< 関節の健康をサポート >>
実際にスキップで診察に来たケース
愛犬がスキップする、ということで診察に来られるかたは多く、その一部をご紹介します。
スキップするからMRIを撮りましょうと言われたトイプードル
元気で走り回るトイプードルが、最近は散歩のタイミングでスキップするようになったので大きな病院に行ったところ、神経の問題がないことを確認するためにMRI検査を勧められた。
全身麻酔が必要な検査が必要だろうか?というご相談で来院されました。
仮の診断では膝蓋骨脱臼だろうということで、それでも念のためにMIR検査を勧められたのだそうです。
当院でもやはりパテラが緩いせいで膝に違和感があるのだろうという診断でした。
MRI検査が必須かといわれれば、そこまでの要素を感じなかったので、整形外科専門医の先生にも見てもらうことにしました。
このように、「スキップする」という症状でも獣医によって意見の別れることはよくあります。
結局このトイプードルは膝蓋骨脱臼があるものの、違和感程度なので経過観察となりました。
これと言って治療をしたわけでもないのですが、スキップする動作はその後に減って、「道路が暑かったのかしら??」と後から飼い主さんから言われています。
前からスキップすると思っていたら、靭帯(じんたい)が切れてました
愛犬のスキップする時間が伸びていて、最近は足をつかなくなってしまったと来院されました。
飼い主さんはいつもの癖だと思っていたのですが、実は靭帯が切れていたケースでした。
靭帯が切れていると痛みも強く、足に力を入れることはできないので、スキップというよりは、後ろ足をつねに上げている状況になります。
スキップというと軽い状態のように聞こえてしまいますが、靭帯が切れているのは完全に怪我をしていて本人は辛く、治療が必要な状態です。
靱帯の損傷では手術が必要なケースもあるので、スキップしているだけ、とは捉えずに重症のケースもあると知っておきましょう。
まとめ
犬が見せるスキップ行動には、単なる癖のケースもあれば、関節に異常が隠れている場合もあります。
とくに膝蓋骨脱臼や関節炎、靭帯の損傷など、放置すると悪化する病態の場合、早期発見・早期対応が非常に重要です。
飼い主が注意深く観察し、必要に応じて獣医師に相談するようにしましょう。
加えて、日頃から関節の健康を意識したサプリメントケアを取り入れることが、愛犬の健やかな生活を守る鍵となります。



松波動物メディカル通信販売部本店公式ブログ

最新記事 by 松波動物メディカル通信販売部本店公式ブログ (全て見る)
- 犬がスキップするのは癖?関節疾患? - 2025年5月20日
- 何種ワクチンが必要?犬のワクチンとレプトスピラ症の話 - 2025年5月9日
- 犬の痒みと皮膚トラブルについて - 2025年5月7日