愛犬・愛猫の冷えが引き起こす関節トラブルと徹底対策

寒い季節になると、人もペットも自然と体がこわばり、動きが鈍くなりがちです。
特に犬や猫の関節は、冷えの影響を非常に受けやすく、季節性の痛みを引き起こしたり、既存の疾患を急速に悪化させたりする原因となります。
「年だから」「寒がりだから」と見過ごされがちな立ち上がりの遅さや散歩を嫌がるといったサインは、関節の炎症や痛みが悪化している証拠かもしれません。
愛する家族であるペットたちが、冬を健康で快適に過ごせるよう、冷えが関節にもたらすリスクと、今日から実践できる具体的な対策を徹底解説します。
なぜ冷えは関節トラブルを招くのか?
冷たい外気や室内の底冷えは、体温を奪い、犬や猫の体にさまざまな負の連鎖を引き起こします。これが関節の健康を大きく脅かす主なメカニズムです。
血行不良による炎症の悪化
体温が下がると、体は生命維持に必要な臓器に血液を集中させようとします。その結果、手足や末端にある関節周辺の血管が収縮し、血流が悪くなります。
酸素と栄養の供給不足: 関節を構成する組織に必要な栄養や酸素が行き届かなくなります。
老廃物の蓄積: 炎症の原因となる痛み物質(プロスタグランジンなど)や老廃物が排出されにくくなり、痛みがさらに強くなります。
筋肉の緊張と関節液の粘性増加
冷えによって関節周辺の筋肉が緊張し、硬くなります。筋肉が硬くなると、関節への負担が増加し、さらに動きが制限されます。
また、血行不良により動きがより鈍く、こわばりやすくなります。
痛覚神経の過敏化
寒さは痛みを伝える神経を過敏にさせることが知られています。普段は我慢できる程度の炎症や軽い刺激に対しても、痛みを感じやすくなるため、ペットはより顕著な不快感を示すようになります。
寒さでこわばることにより起こる主な関節疾患
冷えによって悪化しやすい、または症状が顕著に出やすくなる関節や骨の疾患は多岐にわたります。特に注意が必要な疾患を知り、早期発見に繋げましょう。
変形性関節症
最も一般的で、冷えで症状が劇的に悪化する疾患です。
特徴: 加齢や肥満、先天的な異常などが原因で、関節の軟骨がすり減り、炎症や骨の変形が起こります。
冷えによる影響: 炎症により痛みが増幅され、硬くなった関節は動くたびに激しい痛みを伴います。
寒さで活動量が減ることも、関節の可動域をさらに狭める悪循環を生みます。
椎間板ヘルニア
特にダックスフンドなどの胴の長い犬種や、高いところからの着地に失敗した高齢の猫などで発生しやすい疾患です。
特徴: 背骨の間にあるクッション(椎間板)が飛び出し、脊髄神経を圧迫することで、激しい痛みや麻痺を引き起こします。
冷えによる影響: 寒さで背中や腰周りの筋肉が硬くなると、すでに圧迫されている神経への負担が増大し、痛みが悪化します。背中のこわばりから、急な歩行困難やふらつきとして現れることがあります。
膝蓋骨脱臼
小型犬に非常に多い疾患で、膝のお皿(膝蓋骨)が正常な位置からずれてしまう状態です。
特徴: 普段は足をスキップするように挙げたり、時々びっこを引いたりする症状が見られます。
冷えによる影響: 寒さで膝周りの筋肉や靭帯が硬くなると、脱臼しやすくなり、痛みや違和感も増します。
特に冬場は、急な方向転換や運動時に完全な跛行(びっこ)として現れやすくなります。
関節ケアに必要な栄養素とは?
日々の食事やサプリメントを通じて、関節の構成要素を補給し、炎症を和らげる栄養素を積極的に取り入れることは、関節ケアの重要な柱となります。
関節の構成要素を補う成分
関節の軟骨や関節液を構成し、弾力性を維持するために必要な栄養素をサプリメントで補給することは非常に有効です。
<グルコサミン>
軟骨成分の一種で、軟骨や関節液の主要な構成成分の一つです。
役割: 軟骨の生成を促し、軟骨の修復をサポートします。また、関節液の粘性を保ち、関節の動きをスムーズにする働きがあります。
<コンドロイチン硫酸>
軟骨の主成分であり、軟骨に水分を保持させる働きを担っています。
役割: 軟骨の弾力性とクッション性を維持し、軟骨の分解酵素の働きを抑えるとも言われています。グルコサミンと併用することで相乗効果が期待されます。
<MSM(メチルスルホニルメタン)>
有機イオウ化合物の一種で、体内のコラーゲンの生成に必要な成分です。
役割: 抗炎症作用を持つとされ、特に痛みの軽減に役立つと考えられています。関節周囲の靭帯や腱の健康維持にも貢献します。
<低分子ヒアルロン酸>
関節液の主成分で、潤滑作用と衝撃吸収作用を持ちます。
役割: 関節の動きを滑らかにし、摩擦を軽減します。サプリメントとしては、吸収性を高めた低分子化されたものが推奨されます。
炎症を抑えるオメガ-3脂肪酸
関節炎による痛みの根本原因である炎症を抑制する目的で、最も注目されているのがオメガ-3脂肪酸です。
<EPA・DHA(エイコサペンタエン酸・ドコサヘキサエン酸)>
これらは魚油などに多く含まれる必須脂肪酸です。
役割: 体内で炎症を引き起こす物質(アラキドン酸など)の働きを抑制し、代わりに抗炎症性の物質を作り出す作用があります。
効果: 関節炎による疼痛の軽減、関節の腫れの改善、そして関節の可動域の維持に役立つことが多くの研究で示されています。
サプリメントを選ぶ際は、高濃度で酸化対策がしっかり施されたフィッシュオイル(魚油)やクリルオイルを選ぶことが重要です。
関節ケアに特化した療法食・フード
市販のペットフードの中には、関節の健康維持に特化して上記成分(グルコサミン、コンドロイチン、EPA・DHA)を高配合した製品や、獣医師の指導のもとで給与する療法食があります。
注意点:療法食は必ず獣医師の診断と指示に基づいて与えてください。
<療法食のメリット>
療法食は、特定の疾患(例:変形性関節症)を持つ犬猫のために、獣医学的な根拠に基づいて栄養バランスが調整されています。単に特定の成分を増やすだけでなく、体重管理のためのカロリー調整や、抗酸化作用を持つビタミンEなどの配合も考慮されており、総合的な関節ケアが可能です。
<体重管理の重要性>
どんなに良いサプリメントを与えても、過体重や肥満は関節への負担を増大させ、炎症を悪化させます。関節ケア用のフードは、適切な体重を維持できるように低カロリーかつ高タンパク質で設計されているものが多いのも大きなメリットです。
愛するペットのための徹底した寒さ対策
関節を守り、冬の痛みを和らげるためには、生活環境を暖かく整えることが何よりも重要です。
居住スペースの室温管理
理想的な温度と湿度: 一般的にペットにとって快適な室温は20〜25°C、湿度は50〜60%程度と言われます。エアコンなどで部屋全体を暖めましょう。
底冷えの防止: 床からの冷気は関節に直撃します。ペットが過ごすエリアには、ホットカーペットや断熱効果のあるマット、厚手のラグなどを敷き、暖かくふっくらとした寝床を用意してください。
日当たりの活用: 日中の日差しが入る場所を確保し、日光浴で体を温め、ビタミンDの生成を促すことも大切です。
防寒グッズの活用
ペット用ヒーター・湯たんぽ: 直接体を温めるアイテムは有効ですが、低温やけどに十分注意し、必ずタオルなどで包んで使用し、熱源から離れる場所も用意してあげてください。
服やウェア: 特に体脂肪が少ない犬種や、シニア犬・猫、持病を持つペットには、散歩時や室内の防寒としてペット用の洋服を活用しましょう。関節が冷えやすい腰やお尻をカバーできるデザインが理想的です。
運動と休息の環境整備
活動的な時間帯の確保: 散歩や遊びは、比較的暖かい日中の時間帯を選びましょう。適度な運動は関節の柔軟性を保ち、周囲の筋肉を強くします。
滑り止め対策: 寒さでこわばった足腰でフローリングのような滑りやすい床の上を歩くと、関節に大きな負担がかかり、滑って転倒することで急な怪我に繋がります。カーペットや滑り止めマットを敷き、安全に歩ける環境を整えましょう。
まとめ
寒くなると関節トラブルはとても多くなります。
高齢動物ではとくに、動き始めが痛いことが多いようで、寝て起きてすぐは足を挙げる、かばう、というようなご相談もよく聞きます。
人が長袖を着るようになったときは、ペットにも寒さ対策で暖房を入れてあげましょう。
血行不良が関節トラブルの原因になることが多いので、まずは室温管理、そして適切な運動、関節によい栄養をとることが大切です。
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