2020.02.19健康 , 知識

ネコちゃんに多い病気(異物誤食のこと:後半その1)

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Cat in veterinarian clinic checkup

こんにちは!松波動物病院メディカルセンター獣医師の松波登記臣です。今回は『ネコちゃんに多い病気(異物誤食のこと:後半その1)』をお届けします。前半部分では、『異物誤食』のことやその原因や症状についてご紹介させて頂きました(→前回の記事はコチラから)。今回の後半(その1)は、主に『異物誤食』の動物病院でどのように診断されているのか?などについてご紹介します。

 

前回の記事でのご紹介したましたが、ネコちゃんが何かしら異物誤食をした場合、危険となる病態(病気の状態のこと)は頻回の嘔吐です。またそれに伴い腸閉塞に陥ってしまった場合は、1日10回近く嘔吐をしてしまうという報告がありますように、緊急的な診断および治療が必要とされることもあります。そのような場合になったら、まずは動物病院を受診してください。また動物病院では以下のように診断および治療の流れになります。

1. まずは問診

調子が悪くなったネコちゃんを診察室で獣医師が診察をしていきますが、まずはここで問診が始まります。ここでご家族の皆さまにお願いがあります。それは“正確性”です。つまり、食べた可能性がある具体的な物のご提示です。異物が紐なのか、プラスチックなのか、金属的なものなのか、植物なのか、どうかということ。しかしながら、全く予想も出来ないのでしたら、それもはっきり獣医師に伝えてください。

その次に、お家で確認できた症状についてです。嘔吐があるのか、下痢もあるのか、食欲はどうか、飲水量や回数はどうか、など。それがいつから発生しているのかも重要です。

それと最後に意外と大切なのが、人為的か否かということ。例えば、猫じゃらしなどで遊んでいたときに、紐状のものを見失ってしまったとか、家にいるおばあさんが人間が食べているものを与えてしまっていたとか。人為的という言葉は決していい言葉ではありませんが、私たち獣医師にとっては非常に重要なことになります。

あとネコちゃんなら、他の同居のネコちゃんでも同じような症状があるのかないのかも必要です。可能性は低いですが、ウイルス感染による胃腸炎などがある場合は同居ネコちゃんにも伝染してしまっていることもあり、今回の症状が異物誤食ではなく、感染性のウイルス性疾患の可能性も出てくるからです。

2. つぎに触診など

診察台に乗せられたネコちゃんは獣医師の手によって触診され始めます。口の中や顔つき目つきなど、さらにはお腹を触ったときに痛みがあるのか、胃の張りや腸の張りがあるのかないのかもチェックしています。心臓の音を聴診するついでにお腹にも聴診器を近づけて胃腸の動きが確認する場合もあります。さらにお熱があるのかもチェックするので体温計を肛門で測定したりもします。

3. 検査が始まります

明らかに状態が悪いネコちゃんの場合は、血液検査やレントゲン検査、さらには超音波検査など一気に全部行っていくとは思いますが、私自身、いくつか検査を提示しますが、最低限でもレントゲン検査は受けてください。レントゲン検査は白黒のコントラストで臓器や骨などを識別して、診断していく検査ですが、例えばレントゲン検査で写る異物(金属など)などは一発で異物の所在が明らかになります。また腸閉塞のときは特徴的な腸のねじれや腸ガスの蓄積が明らかになりますので、状態がかんばしくないネコちゃんは必ず獣医師が勧めるレントゲン検査は受けてください。

X-ray picture of foreign body in abdominal cavity by cat

 

1枚目のレントゲン写真は(赤矢印)、異物を指しています。このようなケースは一発で異物の存在を明らかにしてくれますが、まずレントゲン検査で写ってくれればの話です。経験上、金属など以外の異物でここまでクリアにはまず写りません。私たち獣医師は、異物自体だけでなく、腸のガスの溜まり具合なども参考にレントゲン検査で見ています。

images

2枚目のレントゲン写真は、皆さんも健康診断で一度はされたことがあるかと思いますが、バリウム検査ですね。バリウム剤を飲ませて何分後から何回に分けてレントゲン撮影をします。胃腸の動きに問題がなければ、最後まで流れますが(結腸や直腸といわれる大腸まで)、途中でバリウムが一切流れなくなったり、写真でも写っているように腸自体の動きが異常をきたしていると(写真ではぐにゃぐにゃ)、腸閉塞などを疑って診断していきます。

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獣医師 松波登記臣

獣医師 松波登記臣

名古屋市にある松波動物病院メディカルセンター副院長の松波登記臣です。臨床獣医師として毎日診療および手術を担当しています。専門分野は、内分泌疾患(糖尿病、クッシング、甲状腺)や肝臓疾患で学位を取得しました。また近年では「痛みが少なく・傷が小さい」内視鏡手術に取り組んでおり、腹腔鏡を用いての避妊手術や各種生検、さらには胆嚢摘出、副腎摘出、肝葉切除などを行っています。